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板橋ビューネ2024/2025

グローバル資本主義とシュルレアリスム――欲望と暴力のメタメッセージ――

 2019年から続いた「コロナ禍」による厳戒態勢は(消極的にではあるが)2023年にようやく解かれ、経済活動は復興の兆しを見せ始めた。2022年からはロシア・ウクライナ戦争が始まり、2023年にはイスラエルによる大規模なガザ侵攻が始まった。日本政府は社会保険料や労働保険の値上げと消費税の増税を行い、防衛費は安倍政権以降いまだに増加している。
 「風がふけば桶屋が儲かる」と言わんばかりに、世界各国が政治・経済・貿易などあらゆる面で接続している今日、対岸の火事の火の粉は遠い国の市民にも降りかかってくるのである。’89年の冷戦終結以降、地球上では常に何かしらの代理戦争が行われている。日本の自衛隊も、世界戦争に参加していることを忘れてはならない。
 グローバル資本主義下では、戦争はなくてはならないものである。永続的な経済成長はありえず、豊かになった国は移民を必要とする、この「システム」は自滅を前提としているのである。都市における不動産価格のインフレーション、生鮮食品や燃料代の高騰、オーバーツーリズムは、自滅へ向かう快楽的欲望でさえある。いまや、聖域であった教育ですら、この欲望の対象である。
 かつて正当なダンディズムが持っていたような倫理感は、この時代には崩壊してしまっている。恋愛や性欲にまつわるスキャンダルやハラスメント、またこれらの告発は、一つ一つのケースにおいては(当然のことながら)深刻な問題であるが、それがSNSやメディアに乗ってしまえば、「正義」を告発するエンターテイメントによって消費されてしまうという有様である。ハラスメントの告発それ自体は、全く正当な正しいものであったとしても、セカンドハラスメントは卑猥で道徳の埒外にある欲望の発露になってしまっている。いまや誰も、投げる石を止めるように呼びかける人はいなくなってしまったのだ。もう、政治家の不正や教職員(や聖職者)による性被害に驚くことはなくなってしまった。

 ある意味では、常時世界戦争が続き、倫理感の欠けた今のこの世界は、『ユビュ王』的な自己中心的で壊滅的な状態を地で行ってしまっているのかもしれない。この時、エロスや暴力といった、冷戦の以前には社会の中では隠されていた欲望は、常にオープンになっている。広告やメディアを見れば、あからさまな「セックスをしろ」「金を稼げ」「戦争に行け」というメッセージで溢れているではないか。
 この時、私たちはメタメッセージというものを、どのように受け止めるだろうか。かつてシュルレアリストたちが、人間の無意識や欲望、暴力といったものに駆り立てられたことが、全てグローバル資本主義と世界戦争の下で、聖性も奥行きもない、全く平凡な、ごくありふれたゴシップとして消費されてはいないだろうか。生と死を消費し尽くすこの世界において、市民一人一人の人生は、すべからく資本によって投機されている。そのような生にとって、生を消費せよという広告は、生を否定せよ、社会に適応できないのだったら隠遁すべし、戦争に行かないのならば納税をせよ(そして納税ができないのならば野垂れ死ぬのだ)というメタメッセージを送りつけているはいないだろうか。

 WWIとWWIIという大戦の狭間に生まれたシュルレアリスムは、冷戦を経たグローバル資本主義にとっては、反転した世界を描いているとも言えるだろう。コロナ禍を経た現在時点において、これらのテキストを再解釈することは、意義のあることのように思える。
 

サイマル演劇団

シュルレアリスム︎/宣言

原作︎/アンドレ・ブルトン

翻訳/巖谷國士

構成・演出・美術︎︎/赤井康弘​

2024.12.05thu 20:00

2024.12.06fri   15:00/20:00

2024.12.07sat 13:00/18:00

2024.12.08sun 13:00/18:00

出演/葉月結子

   大美穂(イナホノウミ)

   永守輝如

料金︎/一般3500円 学生・障害者割2000円

   サイマル応援チケット10000円

 

チケット予約︎/https://stage.corich.jp/stage/341711

問い合わせ/info@subterranean.jp

                 080-4205-1050(赤井)

照明︎/麗乃(あをともして)

音響︎/豊川涼太(街の星座)

衣装/サイマルお針子団

字幕/梅村梨恵

舞台監督︎/大山ドバト

宣伝美術︎/伊東祐輔(おしゃれ紳士)

制作/竹岡直紀(劇団俳優難民組合)

   赤松由美(コニエレニ)

   さたけれいこ(サブテレニアン)

著作権代理︎︎/フランス著作権事務所

企画・製作/赤井康弘

協力︎/kuni 長堀博士 岩波書店

主催/サブテレニアン

   サイマル演劇団

上演時間︎/70分

アンドレ·ブルトンの「シュルレアリスム宣言」発刊100周年を迎え、アバンギャルドの作品で実績を積むサイマル演劇団·赤井康弘が、舞台化に臨む。
「我の御身が痙攣する複数性」を瞠目に、夢か現か、身体と精神の境界で、現実が曖昧に溶けてゆく。

100年前、世界を揺るがす「宣言」が発表された。
戦間期に発表されたそれは、100年後の現在にでも影響がある。

この舞台は事件になるのか? 新たな「宣言」か?

 

演出家·赤井康弘のほぼ一人劇団。1995年、仙台で旗揚げ。東京公演や東北地方でのツアーを行う。
2000年、東京に拠点を移す。2006年からサブテレニアンをフランチャイズとして活動。以降、古典作品を上演。俳優の身体性を軸に、物語から距離を持ち、そこから離れようとする身体と近づいてしまう精神とのせめぎ合いを、硬質な身体と独特の発話で、主に不条理劇、前衛劇として上演。国内各地域の他、韓国、ポーランド等で公演。

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楽園王

授業

作/ウージェーヌ・イヨネスコ

演出︎/長堀博士

2024.12.17tue 19:30

2024.12.18wed 19:30

2024.12.19thu closed

2024.12.20fri   19:30

2024.12.21sat 19:30

出演︎︎/久堂秀明

   塩山真知子

   杉村誠子

   小林なほこ

料金︎/前売・予約3000円 当日3500円 学生2000円

 

チケット予約/https://rakuenoh.net

楽園王、1991年に東京で旗揚げ、2025年に34年目に突入する。長堀博士の迷路のような劇作の他、古典戯曲にて演出家賞などを受賞したことを契機として、古典や文学作品などもレパートリーに加えている。2024年には『風』の上演で初代茨城劇王の称号を手にした。

20年前、2004年に利賀演出家コンクールにて優秀演出家賞を受賞した演出の再演。レパートリーという考えの劇団による、当時から続く継承された演出作。今回は、初演メンバーの久堂秀明、塩山真知子、杉村誠子に加え、小林なほこを加えて公演する。構成を大きく分断し、起承転結の転と結を先に上演し、起と承を後から上演することにより、不条理劇の不条理を倍増させている。また、原語にも当たり、音声に強いこだわりを示した。

イェギシアター&セーズレーヴ

命を弄ぶ男ふたり

原作︎︎/岸田國士

演出︎/ヤン・ジョンユン

2025.01.11sat 18:00

2025.01.12sun 13:00

出演︎/チェ·ウソン
   チェ·ホンジュン

料金︎/一般3500円 学生・障害者割2000円

 

チケット予約︎/yoyaku@subterranean.jp

​問い合わせ/080-4205-1050(赤井)

「さあ、あなたも一緒に行きましょう、一緒に死にましょう。」

この作品は、日本の劇作家岸田國士の戯曲を脚色したものである。この作品は、自殺、絶望、人生の価値と再出発の力に対する理解と認識を促すことをテーマにしている。

自殺、絶望、命の尊さ、新たな始まりの力をテーマにした作品です。

 

セーズ(Seize)はフランスの庶民が好んで飲むビールです。レーヴ(Rêve)はフランス語で夢という意味です。
一日の疲れを癒す時間、普通の人々が集まります。一杯のビールを飲みながら自分の人生を語る時間、 そして夢を見る時間。
その夢があるからこそ、矛盾だらけの世界を生き抜く力を得る。
その夢を一緒に見るために努力する劇団。セーズレーヴです。

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​緑色のストッキング

作/安部公房(新潮社「安部公房全集 25」より)
演出︎︎/村岡正喜(Not in service)

2025.01.24fri 14:00/20:00

2025.01.25sat 14:00/19:00

2025.01.26sun 11:00/16:00

出演︎︎/荒川流
   小倉愴
   柴田周平
   ともなが舞
   堀慎太郎
   松原一郎
   松島寧子
   山﨑萌
   山畑拓之
   綿貫美月

   村岡正喜

​料金︎/前売3000円 当日3500円

 

チケット予約︎/https://stage.corich.jp/stage/350984

問い合わせ先:同上

舞台監督︎︎︎︎/しますえ茶髪(劇団美辞女)
照明︎︎/吉平真優
音響︎︎/河相朱音(Québec)
映像・宣伝美術イラストレーション/得地弘基(お布団)
映像レイアウト協力・宣伝美術レイアウト構成/山﨑萌
制作・当日運営/松原圭
当日運営協力︎/岡田まりあ

       加藤恵実
協力︎︎︎︎
/ChatGPT(OpenAI)


医者は、病院と地続きに住んでいた老婆の家と財産を買い取った。
身寄りも金もない老婆が生きていることには、ある奇妙な理由があった。
さらに、医者の所に、自殺を計った男が運び込まれる。彼は教員であるが、「あること」で追い立てられていた。
生き延びた男に医者はある提案をし、
男は地上最初の草食人間となることを決意する…。
50年以上を経て再演する、第26回読売文学賞戯曲賞受賞作品。
安部公房のゴーストはここにいる。


2006年早稲田にて結成。村岡正喜による個人ユニット。
東京NERDによる非実在マジックリアリズム演劇を目指して長く活動を続ける。
登場人物の壊れた日本語や挙動不審じみた人々や存在が、やがて必然的未来へと巻き込まれる。
代表・村岡による演出のみの活動もこれまで古典(「附子」)からゲーム作品まで多岐にわたり、
2023年にはCal企画「曲者」(脚本:ブレンダン・ビーハン)の演出を手掛けた。

ほしぷろ

nur Woyzeck

原作
/ゲオルク・ビューヒナー(Woyzeck)

構成・演出︎︎/星善之

2025.01.16thu 19:30

2025.01.17fri 14:00/19:30

2025.01.18sat 14:00/19:30

2025.01.19sun 14:00

出演︎︎/星善之

料金︎/一般2500円 学生500円(当日券は500円増し)

 

​チケット予約︎/https://www.hsysyk.com/nurwoyzeck

問い合わせ先/hoshipro.s@gmail.com
       070-9033-1827

照明︎︎/麗乃

​制作/ほしぷろ


実験ドウブツWoyzeck。愛する者のために、実験ドウブツとなり、非人間的な扱いを受けるWoyzeck。ヒトは言う、彼はいい人間だと、皮肉をこめて。彼は言う、自然が近寄ってくると。
記憶と記録の断片をつなぎ合わせた、Woyzeckだけのストーリー、彼は、あなたに、語る。


演劇を表現の中心に据えた創作ユニット。
現実世界と物語世界とを往来するような演出を行い、演る側と観る側の境目の融和を目論んだ作風が特徴。
幅広い年代に楽しんでもらうべく、小説や童話などを題材にすることが多い。これまでの上演作品には「虔十公園林」「『なめとこ山の熊のことならおもしろい。』」などがある。第12回せんがわ劇場演劇コンクールにて演出家賞(星善之)と俳優賞(瀧澤綾音)を受賞。

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通し券/一般12000円 学生8000円

(観劇には各団体毎に予約が必要です)

通し券予約︎・問い合わせ/yoyaku@subterranean.jp

            080-4205-1050(赤井)

 

宣伝美術︎/伊東祐輔(おしゃれ紳士)

企画・製作︎/赤井康弘 よこたたかお 長堀博士

主催/サブテレニアン

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