『ハムレットマシーン』
読書会
1977年に発表されたハイナー・ミュラー作『ハムレットマシーン』は、とても短い戯曲です。台詞劇とは異なる書き方をしていることから、難解といわれてきましたが、読むコツがわかれば難しくはありません、これまで数多くの演劇人を魅了してきました。
『ハムレットマシーン』はシェイクスピア作『ハムレット』を翻案していた作家が、独立した戯曲を書こうと思い立ち生み出されました。第二次世界大戦でのドイツの敗戦を受けて誕生した分断国家東ドイツの歴史と状況が細部に織り込まれています。
読書会では、まず初回に、冷戦期の東ドイツの歴史がどのように『ハムレットマシーン』に織り込まれて表現されているかをご紹介します。
さらに、時代に応じて『ハムレットマシーン』がどのように受け取られ、上演されてきたかを知る手掛かりとして、関連する映像を4回にわたって上映します(なかには劣化した映像もあるので、この点を了解してください)。
日本語字幕を付ける予定です。毎回意見交換の時間をとります.
ファシリテーター/新野守広・・・立教大学教授。ドイツ演劇研究。著書に『演劇都市ベルリン』、訳書に『最後の炎』など。
1
4月18日(木)19時〜22時
『ハムレットマシーン』の紹介。
参考映像『ハムレット/ハムレットマシーン』(ハイナー・ミュラー演出、1990年)の抜粋。東ドイツが崩壊していくのを目の前にしながら、劇場に残ったミュラーと俳優・スタッフたちがかろうじて稽古を重ね、上演にこぎつけた舞台の一部抜粋映像です。
2
5月9日(木)19時〜22時
参考映像『ハムレットマシーン』(ロバート・ウィルソン演出、ハンブルク・タリーア劇場、1986年、約2時間)。ロバート・ウィルソンはハイナー・ミュラーの西側の友人で、80年代には西ドイツで一緒に舞台を作っていました。東ドイツの歴史的文脈にこだわらない『ハムレットマシーン』です。
3
6月6日(木)19時〜22時
参考映像『ハムレットマシーン』(ディミター・ゴッシェッフ演出・出演、ベルリン・ドイツ座、2007年、約1時間)。ディミター・ゴッシェッフはハイナー・ミュラーの古くからの友人で、東ドイツ時代にミュラー作品の舞台制作にも携わり、東ドイツが崩壊した後もドイツ語圏で演出・俳優として活躍しました。東ドイツが消滅して久しい21世紀に『ハムレットマシーン』の上演は成り立つのかが探られています。
4
7月18日(木)19時〜22時
参考映像『アルトゥロ・ウイの興隆』(ハイナー・ミュラー演出、ベルリナー・アンサンブル、1995年、約2時間、画質劣化)。ハイナー・ミュラーが亡くなる直前に演出したブレヒトの戯曲です。主人公アルトゥロ・ウイにはヒトラーが擬せられいます。主演したマルティン・ヴトケの超人的な演技が評判になり、最近まで月1回程度のロングラン公演が続いていました。ハイナー・ミュラーは難解な作家・演出家と思われていますが、血沸き肉躍る舞台も許容する懐の広さ/深さがあったことがわかります。